ば ら 子供の頃、ご近所に子供のいない御夫婦がいた。 その頃には未だ家庭で、犬を飼う人はほとんどいなかった。 毛糸で編んだ白いベスト風の物を着せて、いつもかわりばん こに抱いていた。 飼い主に似てか、とてもおとなしい犬だった。 飛び石づたいに見る庭は、とても閑静であった。 今も強く印象に残っている事がある。 二、三ミリ程の石を塗り込んだ高塀の上部に、つるばらが ぎっしりと、ピンクの花を付けていた風景である。 何度目かの現在のわが家の庭には、それと同じつるばらが 咲いている。 咲き方は 言うまでもなく「月とスッポン」ではある。 白い柵に懐かしく咲いている。 その株元には 今風に隙間のない位 さまざまな色彩で、 楽しませてくれている。 が・・・・・・ 近所には朝に夕に、多種類の犬が吠えたてている。 小学生の頃子供にねだられて、最初可愛がられ、そのうち 子供達が 忙しくなり散歩も儘ならず、と言うところだろうか。 おもえば犬も哀れなものである。 こうや槙 薔薇添へられし 広座敷 ※高野槙(こうやまき)は主に和歌山県高野山で 産する日本特産のスギ科の常緑高木、み仏さま にお供えされる美しい樹木である。