い ろ い ろ あ る の わたしってね、とても ”三枝子さん”が 好きだったの。 勿論、高峰三枝子よ。歳をとっても オシャレで美しく、そして 可愛いじゃない。 歳をとったって、ソバカスが増えたって、いいじゃない。 三枝子の鼻の上の方に集まったソバカス、素敵だったワ。 わたしも なりたいくらい。 わたしの姉にもあるの。でも、とても気にしている。 三枝子さん顔立ちがいいから、羨ましかった。 肥っていてもよかったのにね。 梅干大の麦ご飯。 そんなに迄して、痩せる事はなかったのよ。(他に事情でもあったの。) 豊満な胸も ヒップも、素敵だったのに。 どんなに華麗に歳を重ねていくか、楽しみにしていたのに。・・・ で、時々名前を拝借してるの。 いいよね。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− もう、十数年にもなるかしら。 その頃、三枝子、よく旅行していたの。 或る団体の招待で、バスを連ねて行ってたの。たまに近所の人と一緒 になる事が、あるけれど、ほとんど知らない者同志。 でも、旅って不思議。 同室になると次の朝には大抵、仲良しになってるの。 お風呂に行くのも、買い物するのも皆一緒。 三枝子も今より少しは、若かったわけだから、その当時 思いもかけ ない言葉に、戸惑った。 温泉に入っていた時の事ね。隣にいた人に 旅の気安さで 一言二言 話かけたの。 彼女ったら 「まあ、知らない若い人から言葉をかけて貰って、今日はうれしい。」 と、言ったの。びっくりしたのは三枝子の方。 特別優しい言葉を、かけたわけではないのよ、 極 普通の挨拶程度。 でも 今の三枝子には良くわかるわね。 どんな些細な事柄でも、一人の時は うれしくて安心なのね。だから 淋しそうな人 には、声をかけてあげたいの。 少し、おせっかいかなあ と、思う事もあるけれど、母も 淋しい人 だった。三枝子は弱い人の味方。これは昔からそうなの。 強い人には向かっていくの。 「ああ、わたしも歳とっちゃったなあ。」 いろいろ あったから でも これから何があったって GOING MY WAY 生きてる 三枝子 がんばれ