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鈴の法話  ----全てに愛を光と祈りを----1999.12月 年功序列賃金や終身雇用制度は成果配分に     美意識や倫理観・健康管理などが大切になる                観音院 法主 鈴之僧正  企業や団体の再構築をするに当たり、過剰な負債、過剰な人員、 過剰な設備を如何に整理するかが大切な課題になります。  過剰な負債を整理するために過剰な設備を整理したり、不必要な 資産を売却して返済に当てたりすることになります。  過剰な人員を整理されると対象となる人は収入を失います。新規 の雇用も期待出来ません。働く人の伝統や文化、期待される人間像 が著しく変化しているようです。雇用者も大変、働く人も大変、ど うすれば生き残ることが出来るか考えてみました。 激変しつつあるように見える       雇用慣習や働く人たちの意識 ■一つの勤務先に生涯勤め上げることが誇らしいことと思われてい た時代がありました。転職を繰り返すと信用が無くなるとも言われ た頃がありました。  最近では学校を卒業しても定職に付かない人も多く、必ずしも就 職先が無いわけではありません。  フリーターと言われる人たちの出現です。自分の才能を自分の選 択した先に提供する、収入は安定しないようですが、自分の働きた い時に働く大きな自由があります。  今までにも職業別に自由業という分類がありました。小説家とか 画家などいろいろありました。  主として免許の要らない職業の人が多かったように思います。  免許の必要な医師とか弁護士などは自由業とはいわなかったよう に思います。  多くは家庭で仕事をこなし、或い、下請けで仕事をしたり、時に は出掛けて行き仕事をする、フリーターの内で成功したものは事務 所を持ちます。雇用者になれば相応の責任が問われてきます。  最近では横文字の職業が増えてきました。デザイナー、イラスト レーター、フラワーデザイナーなどなどです。それも専門細分化す る傾向があって増えそうです。  それらの人たちで人材派遣会社に登録して時間給や日給、出来高 などで所得を得る人がいます。  才能だけで、組織に属さないで仕事が出来ることは素晴らしいこ とだと思います。  同時に、フリーターとして仕事が入らない多くの人があることも 忘れてはなりません。  しかし、文章の書ける人、絵心のある人、ソフトを作成出来る人 などは需要が供給を上回っていて水準の高い人はフリーターでも十 分に仕事があるようです。  最近SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)という概念 が定着しつつあります。インターネットの普及によって世界中の人 が、あたかも隣の席に居るかのように共同で仕事をすることが可能 になりました。  電話とパソコン機器があれば一人で仕事をすることも可能です。 これからは、このような形態の仕事の進め方が増えるかもしれませ ん。競争は激しいようです。  ともあれ、ビジネスチャンスは一気に広がりました。課題はこの 機会をどのように生かすかです。  ただし仕事以外に営業活動も必要です。何もかも自分一人でやら なくてはなりません。  観音院も何カ所もののSOHOに仕事を依頼しています。期待以 上の事務所も、期待以下の事務所もあり、自然に淘汰されていて、 才能で生きて行くことは大変なことが良く分かります。 通信教育くらいの技術取得は     世間に通用しないことが多い ■昔の職人を養成するには、丁稚奉公が六年、お礼奉公が一年が普 通だったようです。 ▼どのような職業でも相当理解力が高くて手際の良い人でも五年か ら七年くらいは習得に歳月が必要だと考えておくべきです。  知識もさることながら、手際・手触り・触感など数値で表せない ような身体で覚えた感じが、職人や専門職の技能と言えます。  これらの習得は六人一組か、一対一で教えられるものが多く、教 室で習えるものは少ないと思います。六人一組も一年生から順番に いて可能なことで、六人同級生は無理だと思います。 ▼技術習得には青少年期が適切で、素直さ、辛抱、服従というような 徳目が不可欠です。  東京の大田区あたりにある中小の工場には素晴らしい技術者がお られて、頑張っておられますが、後継者が育っているとはいえない 実態があり淋しいことです。 ▼昔のような過酷な徒弟制度を肯定するものではありませんが、現 在の多くの専門分野の学校の卒業生は卒業と同時に現場で即戦力と 考えると期待が外れます。 ▼中学高校一貫教育で倫理と技能習得を目指して勉強出来る学校が 欲しいように思います。さらに大学と連続していれば日本の技術力 は現在より高くなると思います。 これらの考え方は学校と地域企業が密接な連携をしないと実現する ことが出来ません。 ▼物作りの基本は職人さんや専門職の技能にあります。最先端の技 術がその人たちの手作りによるものは珍しくありません。 ▼技術革新は日進月歩で、折角の技能が陳腐になることは将来も予 想されることです。しかし、基礎がしっかり出来ていれば応用や転 職など方向転換も容易です。 ▼現在の教育は物作り、創意工夫などに欠けていて、点取りが上手 になるようにされています。 ▼何時の時代でも親が子供に願うのは「手に職をつける」ことです。 ■総合的な知識を幅広く学ぶ現在の教育制度は変化に順応するため に役立つと信じますが、多くの人が高校以上で勉強した科目が実生 活で役立つことが少ないことを実感しておられるのも事実です。 ▼思いつくままの提案ですが、尊敬されるような職能を身に付けた 職人さんや専門職の養成学校が出来れば素晴らしいと思います。 ■子供のころには作文という科目がありました。ところが、社会人 になって文章を作成する用件が出来た時は、逃げる人が多いようで す。自分の主張や現状の報告、将来の予測などは全て文章やグラフ などで発表しなければなりません。 ▼日本人は文章を書くこと一つをとっても職人的技能が著しく欠け つつあるように思えて心配です。 約束を守ること・嘘を言わぬこと     出来ぬことを出来るように言わぬこと ■中途半端な知識は始末の悪いものです。その上に自分の能力の限 界が理解出来ぬ人も損をします。加えて、より勉強をしようとする 態度が無い人は大変です。信頼を失い、社会から疎外されます。 ▼世間ではさまざまな規制が緩和され、競争が激しくなり、リスト ラは一過性の問題では無く、これからもずっと事業所は無駄を省き 有意義な部門だけに集約する傾向が強くなると思います。 ▼多くの企業は複雑に出来ています。国内の生産拠点を海外に移す ことなど珍しくもありません。取引先も距離的便利よりも品質、価 格、納期などて総合的に評価されて、永い付き合いと言うような情 実的なことも考慮されません。 ■一般の人が慎重にならなくてはならない時は「何かを提案」する 時です。権限を移譲されて担当することになると、結果によっては 責任を問われます。 ▼多くの仕事には仕上げる期限、品質などの期待があって、出来な いことを出来るかのように言っていると大変です。個人の責任が企 業全体の責任になります。 ▼反面では立派な仕事をして適切に評価されると、自分の才能を評 価してくれる企業に転職することも普通になるでしょう。 ▼終身雇用・年功序列賃金制度が普通ですが、成果が上がらないと 利益の配分が出来ません。企業にも余裕が無くなり、世間の動きに 敏感に反応しなくてはなりません。  企業が世間の動向に敏感であれば社員も当然敏感である筈ですが 経営者と働く人の間に温度差があると上手く行きません。 ▼昔は利幅が今より大きく、商売に余裕が有ったのかもしれません。 最近では切り詰めるだけ切り詰めて余裕が無くなったのかもしれま せん。「乾いた手拭いを搾って水を出す」と表現されるような酷し い原価の圧縮、その中には人件費も含まれていて対象となった人は 職を失う、このような傾向が続く中で生きて行くのは大変です。 酷しいリストラの中でも例外     気が良く付く思いやり深い人 ■これからの世の中を生きて行く上で、その企業が必要とする能力 に加えて、世間が必要とする能力を身に付けることが大切で、加え て人をまとめる力や性格をもっている人は生き残れる可能性が高い と思われます。思いやりとか、相手の立場で考えることが出来る人 はどの企業にとっても大切な人材だからです。 ▼しかし、企業全体が倒産、統廃合などに追い込まれた場合、転職 先が見つかるかどうかが働く人の大問題です。これも大所高所から 見ると技術の優れた人と人脈の広い人には何とかなりそうです。 ■身軽さということもこれからの人たちには大切な考え方です。  十年とか二十五年のローンなどで持ち家を購入していると転居す る必要のある仕事は出来ません。  出来れば借り家か社宅が安易でピアノや大型冷蔵庫、応接セット や大型家具は持たない方がいざという時に対応が簡単です。  これらは生活の営み方の考えを変える提案ですが、トランク三つ あれば転居出来るような不必要な物は持たない日常が大切になると 思います。  日産自動車の村山工場の閉鎖などにみられる状態は社会の崩壊と 同じであり、転勤出来ない事情のある人は事実上の失業になるよう に思われます。これからも同じようなケースは起こり得ると考えて 対策を立てておくべきでしょう。 ▼企業の城下町のような市町村にとって主要企業の閉鎖は大問題で すが、如何にせんその企業が存亡を賭けて計画することで、誰もが 仕方の無いとみています。  このような非常事態に倫理やその徳目がどのように生かされるか 不明なことが多く、経済の動く影響は予測出来ません。 激動する世間で値打ちの出る      十善戒を胸に刻んだ生き方 ■リストラとか事業所閉鎖で失業することは過酷なことです。多く の人の人生設計は勤務先と密接に組み立てられていて、その根本部 分が崩れるのですから生活の建て直しは人生計画の再策定になりま す。難しい世の中になりました。 ▼多くの場合は再就職に際して賃金は下がります。下がっても職が 見つかるのは幸せな方で、職歴も名誉も自尊心も捨てなければ仕事 が続かないことがあります。 ▼返す当ての無い借金をしないことです。貸した人を巻き込んで不 幸を大きくします。高利の街金融から一寸した金額を安易に借りて はなりません。クレジットは「文字通り計画的に」、原則利用すべ きではありません。保証人には親友であっても印鑑を押さないこと が本当の友情です。 ▼経験の無い仕事を始めないことが大切です。物事が上手く行かな い時は騙され易くなっています。家族や親戚知人などと良く相談を しましょう。相談にあたり内緒事を持たないようにすることが大切 です。全部を話すことが大切です。  特に階級制度があって売上次第で手数料が増える仕事は非常に危 険です。マルチまがいの商売はしない方が無難です。 ▼安易に会社などを友人などに呼びかけて出資してもらってつくら ないことです。資本金一千万円くらいの会社は一年くらいで霧散す るのが普通です。  個人で事業していて法人成りするのと、新しく会社を作って事業 を始めるのは全く意味が異なります。また、会社などが子会社を作 るのとも意味が違います。多くは会社ごっこになってしまいます。 ▼借金があるときは思い切った返済方法を考えましょう。見栄は絶 対に張らないことです。家や車などローンを組んでいる場合には身 軽になることも考えましょう。 ▼どのように困難な事態になっても自殺は絶対にしないよう、前向 きに生きることが大切です。自殺は家族や知人に思いやりを欠く非 常に迷惑な行為です。また、困難な事態になった時は家族や周囲の 人々のあたたかい態度が大切で話をしなくなった、元気が無くなっ た、考え込むようになった時などに不注意に酷い言葉をかけぬよう 注意しましょう。  自殺の多くは衝動的では無くて案外に緻密に計算されていること もあります。経済的に困難な場合は保険は解約すべきです。ですが 「どこかに言い残しのような」会話があるもので、注意して、元気 に生きるよう励ましたいものです。みんなで力を合わせましょう。 ※誰にも干渉されないで仕事は無い。需要には品質・価格・納期が あって、常に市場競争にさらされている中で勝ち残らなければなら ない。  自己を律する強い信念と規則的な生活と健康状態と新しい知識を 吸収する努力が自由の保証になる。電話一本の受け答えで仕事が来 たり来なかったり大変な努力が必要。 ※中高一貫教育の専門学校は望ましい職を手に付ける一つの要素で、 時には進路選択の間違いも起こり得る、中途で進路変更の道を保証 することも大切。  青少年の職業教育と共に、成人の職業教育の道も 広く開かれる 制度が欲しい。日進月歩の技術改革の中にあって、変化に対応する 人材養成の道を開いて欲しい。 ※事業の興亡は昔からあったことで今ほど極端で無かっただけ。  これからもリストラは延々と続けられるであろう。過去の功績と か功労者と言うことで大切にされることを望んでも無理。私は何が 出来るか、どれだけの利益が上げられるか、利益の内の配分は幾ら かと言うことに尽きる。全ては自己責任の時代。 ※仕事を失っても倫理まで失ってはならない。家族や友人を大切に し、無駄を省き、贅沢を慎み、借金をしないように。どんな困難に 出会っても自殺は考えないで前向きに取り組む。  虚栄心を捨て、見栄を張らず、一から遣りなおす気持ちがあれば 道は開けることが多い。慎重に、良く考えて行動することが大切。 ------------------------------------------------------------------------- 鈴の法話1999-12-2 困難な時の情報開示と説明義務を考える    正直に勝る知恵は無い、誤魔化し切れない           観音院法主 鈴之僧正 (要約 田川純照) ■突然ですが、後半の要約を私、田川純照が引き継ぎます。  法主さんは殊更ご体調が悪いというようなことはありませんが、 仕事の総量は大変なもので見かねてお手伝いすることに致しました。 俗に言われる口述筆記のようなものですが、飛び飛びでお話される ことを私なりにまとめますので、宜しくお願い申し上げます。精一 杯頑張ってみます。 口の軽い人が増えたのは残念      生涯沈黙を守るくらいの覚悟 ■最近よく嘆かれることですが、口の軽い人が増えたことがありま す。口が固いことは、信頼関係の基礎みたいなものです。お世話に なった人のことを悪く言うことは良くないことです。 ▼守秘義務が自覚出来る人はこれからは特別に大切にされると思い ます。守秘義務は人間の尊厳のようなもので、相手の態度が変わろ うと、特別な事情が生じようと、他人の秘密は絶対に口外しない、 漏洩しないということです。 ▼人間は弱いものです。誰でも他人に言えないようなことの一つや 二つはあります。身近な人ほど弱点を知っているでしょう。換言す れば口の軽い人を身近にすると大変な災難になることがあります。  口の軽い配偶者であれば生涯の不作、口の軽い同僚とは一線を引 いて慎重に対応しましょう。 ▼元官僚とか元社員が暴露本を出版することがあります。そのよう なことをした場合に、その人を信頼して交際してくれる人がその後 にあるでしょうか。出来るだけ在職中に正すよう努力し、万策尽き た時に世間に訴えるのが筋道だと思います。今ひとつの選択として 黙して去り、沈黙を守り続けることも賢明な生き方です。 ▼他人の欠点や過去の非行を告げ口する人がありますが、悪口を言 う人は、人が変わると自分の悪口を言っていると思うべきです。  商売では他社の悪口を言うことは自社の信用を落とすことになり ます。最近では比較公告を許す社会もあるそうですが、消費者に与 える影響は微妙です。 ■他人の手帳や日記、手紙などを読むことは許されません。  これは親子間でも認められないことで、唯一、子供が夜遅くまで 帰らない時などで危険を察知した場合に手掛かりを探す場合だけと 限定しておくべきです。  最近一台のパソコンで家族が別々のアドレスをもってメールの遣 り取りをする場合がありますが、既に本人を特定しないとファイル が開けないものが開発されています。これは家族や同僚といえども 他人のプライバシーを犯さないようにするためです。 ▼封書は如何なることがあっても本人以外は開封してはなりません。  特例として開封の権限を移譲された人は別です。封書で手紙を出 す時は本人以外は内容を見ないと差出人は期待しているものです。  しかし、多くの手紙を受け取る人は全部を一人で処理出来ないの で係が開封する制度の組織があります。「親展」はそのような場合 でも開封されないことを期待しているのが普通ですが、その「親展 文書」さえ開封して代理の人が内容を見れる権限を与えている場合 もあります。 ▼多くの場合、業務上知り得たことを漏洩すると罰せられます。 迂闊に顧客名簿を漏洩するなどは、相手がどのように利用するか 分かりません。顧客情報などを知り得る立場の人は、かりそめにも 自宅などへ持ち帰らぬよう慎重にしてください。 情報には開示説明さるれるものと      管理下で厳重に守られるものが ■個人情報の漏洩は、重大な犯罪でも犯さない限り開示されること はありません。もしそのような場合であってもその人の自宅の電話 番号まで開示されることはありません。情報は開示し説明すべきも のと、絶対に漏洩してはならないものとがあります。 ▼人間は情報の宝庫であり、転職などに際し、どの程度まで前の職 場の情報を説明すべきか判断の難しいところです。前の職場が倒産 などで無くなっている場合は大半の知識は提供出来ます。引き抜か れたり、転職した場合は色々と問題がありそうです。そのような際 に個人のプライバシーはかれこれ言わない方が無難です。  前の職場の顧客情報は自分自身に属するものかどうか微妙なとこ ろです。同業に転職した場合には慎重に配慮しましょう。持って来 た顧客は持って去ると考えるのが賢明な経営者です。  仕事のシステムなどは簡単に移植出来るものではありません。こ れは個人の技能に属するものと言えるかもしれません。  しかし、多くの場合、転職先は特別な資格でも持たない限り、前 職の地位や知識を必要としていないようです。  一からやり直しと考えて謙虚な態度で臨むのが望ましいことです。  それでも転職出来るのは良い方で、職がなかなか見つからない場 合が多いようです。  職を選ばないことも大切ですが自尊心との兼ね合いが難しく、焦 ると失敗します。  さりとて鷹揚に構えていると仕事は見つからないでしょう。 多くの経営者は歩合給です       能力ある人は歩合給も考慮 ■社長さんと名が付く人は自分の会社の業績次第で責任の重い歩合 給です。営業の仕事は常に人手不足で、それだけ営業は難しいとい うことかもしれません。  人間関係の作り方や商品説明に自信のある人は営業職に就けば失 業は無いでしょう。上手く行くようでしたら独立も考えられます。  百人に一人くらいの割合で所謂商才というものを持っておられる 方がおられるようです。  これは不思議な能力で、説明が上手く出来ません。訓練次第とか 勉強次第で商人になれるものでも無いようです。  独立して事業を営むには成功率は一%くらいと考えておけば無難 なように思います。  商売をするにつけては、ご自身が「簿記」の知識を身に付けてお られるか、身近に簿記の出来る人が不可欠です。  経営者は優柔不断で慎重で果敢に決断出来る「勘」が不可欠のよ うに思います。このような矛盾した性格を無理なく一人でこなされ ることは相当な人物です。 ■会社を設立して社長になることは難しいことではありません。難 しいのは売上があるか、利益が出るかの問題です。 ▼個人で商売を始めて、得意先も付いて、利益も出るようになって から法人になるのが望ましいことです。 ▼会社が倒産して、その会社の内で収益力があった部門の人たちが 協力して新会社を設立して、何とかやって行けるというような例は あるようです。 ▼リストラされた人たちが集まって、お金を出し合って、会社を設 立して、このような話は大変に危険です。売上如何に関わらず最初 から多額の人件費を必要とし、余程有能なメンバーでない限り資本 を食い潰すことになります。 趣味程度の延長では自営は無理       故郷に両親がいて農業などは可 ■喫茶店でもしてみようかとか、ケーキ屋さんでも始めてみようか などという話を良く聞きますが、成功された例は場所が極めて良く て、自分の持ち家で家賃が要らないなどの特別の理由があります。 ▼大半の商売は激しい競争の中におかれていて、もう店が立ち行か ないので閉店しようかと考えておられる店が少なくありません。  タレントさんなどが巨額の借金をされた原因を思い出してくださ い。安易に商売に手を広げて失敗された場合が多いようです。 ▼インターネット関連の仕事も激戦時代だと思います。ホームペー ジが作れるとか画像処理が出来るとか、だから勤めを辞めて自宅で 独立して、電話線一本で食って行けると思われると大変です。  ホームページは中身とデータの更新が大切で、その事業の根幹的 経営部分と密接に関連があり、一部分を切り取って仕事とすること は不可能です。ホームページで注意することはメールの取扱いで即 時応答が望ましいことです。これは外注することが出来ません。  インターネットは華々しいような可能性をもっているように受け 取られがちですが、個人で成功することは難しく、スタッフの構成 が大切です。  ご両親などに経済的基盤があって、余裕をもって技術的な勉強が 続けられるなら道が開かれる可能性はあると思います。  パソコンが使えることは普通のことで、昔の算盤程度に受け止め ておくと間違いないでしょう。 ■郷里が田舎で農家である人は羨ましいことです。収入は下がりま すが、ご家族が土地の人であれば容易に溶け込むことが出来ます。 ▼農家が売りに出ていることがありますが、今まで都会生活しか経 験の無い人が農業を志されることは容易ではありません。  農業もまた激しい国際競争の中にあって、政治的配慮はなされて いますが、楽ではありません。人生の一時期を農業や水産業で過ご されることは素晴らしい経験になると思います。 様々に変化し合理化される      四恩十善の教えを頭において ■四恩とは、父母の恩、国家の恩、社会の恩、佛法僧の恩であり、 道義の規範となるものです。 ▼十善の教えは、不殺生・不偸盗・不邪淫・不妄語・不綺語・不悪口 ・不両舌・不慳貪・不瞋恚・不邪見です。 ■報恩積善は大切な徳目で四恩に報いることを全うすることは難し いことです。 ▼恩は親や先生などから受ける恵み、慈しみのことです。「親の恩」 「恩恵」「恩義」「謝恩」などと言う言葉があります。  「恩着せがましい」とか「報恩のために死ぬ者は少ないが、義理 人情のために死ぬ者は多い」「恩を仇で返す」と言う言葉もあって 恩は複雑です。  恩着せがましい恩などは、後に取立てがありそうです。恩を仇で 返されるようでは悪縁です。  恩は借金とは異なり、返しても返さなくても良いものです。他人 から強制されるものではなくて自で感じるものです。  恩は感じなくても良いものですから踏み躙じって良いでしょう。  親の恩は海よりも深く、師の恩は山よりも高いと言われて育ちま したもので、あまり恩、恩、と言われると、煩い、しつこくされて やりきれない、煩雑で、面倒である、と思われる人たちの気持ちが よく理解出来ます。  親孝行を介護保険で出来るような時代ですし、高齢者が両親の面 倒を見ているのは気の毒でもあります。随分と長生きが出来るよう になって、親孝行を徳目として喧伝すると大変なことが起きそうな 心配もあります。  親孝行が出来るのは、親の寿命が比較的短い、長患いをしないな どの偶然が重なって出来る幸運かもしれないとも思います。 ▼報恩積善、刻苦耐労、剛健弘毅、日常勤勉、団結奮闘、持戒堅固を 徳目としていれば、世の中がどのように変わろうとも怖いものはあ りません。  恩については、「私が今日を生きている有り難さ」程度に思えば 相当楽になる筈です。  報恩については、困っている人の立場で考えて上げる、くらいに 解釈されたら出来るでしょう。  子をもって知る親の恩と言う言葉もありますが、子育てに自分の 出来なかったことを期待したり、とかく親も勝手なもので、親子関 係が断絶したり、家庭が崩壊するのも珍しくない当世ですから、い ろいろと難しいことです。 ■国家の恩と言っても、国の為に銃砲を撃つのは報恩の考え方から は外れてしまいます。不殺生と言う十善戒に一つに触れます。  法主さんは親切で優しい寺をつくる、僧侶もそうあって欲しいと 願われています。  日常は十善戒で明け暮れておられるような気がします。  世の中が地球的な規模になり、国際競争が激しくなって、物の値 段も安くなり、それらが働く人や職場にまで影響しています。  技術や技能の競争も凄まじい様相です。善い心になるという競争 はあまり見かけません。  来年は二千年を迎えます。これからは心の時代とも言われます。  どうぞ、「四恩十善の教え」を念頭において良いお年をお迎えく ださい。来年は、四摂法(布施、愛語、利行、同時)や、十波羅蜜 などについても話してくださる予定になっています。来年もどうぞ 宜しくお願い申し上げます。             田川純照 ※他人の手紙や日記を読まない、机の引出しを見ないなど、親子・ 夫婦間であっても駄目です。人間の尊厳に関わる大切なルールです。 人の心を盗み見するようなことになります。  会社などで他人宛の葉書などを見ている人がいたら、品性が疑わ れます。他人の非行については口にしない習慣をもちましょう。 ※自営で商売を始めるには時期が悪過ぎるようです。上手く経営出来 るのは百人に一人くらいです。  サラリーマンの給与の元は、企業の利益の配分です。自分の働きで 幾ら貢献しているか、給与に見合う仕事をしているか考えてみましょう。 無理があるとその職場は何れは無くなると考える方が自然でしょう。 ※父母の恩・国家の恩・社会の恩・佛法僧の恩の「四恩」に報謝出来 る考えは大切です。不殺生・不偸盗・不邪淫・不妄語・不綺語・不 悪口・不両舌・不慳貪・不瞋恚・不邪見、の十善戒を倫理として念頭 におけば怖いものは無くなります。  いたわり、いつくしみ、思いやり、相手の立場で考えて参りましょう。  今月の中途からご法話の口述筆記をわたくし田川純照が引き継ぎま した。頑張りますのでご声援を賜りたく宜しくお願い致します。  法主さんは体調は悪いのではなくて、沢山の相談やその返事などで 大変に多忙で見るに見かねてお手伝いさせて頂くことになりました。 一日でも長生きされて頂いて導いて下さることを願っています。
Kanjizai index99112000-01

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