五月 席題「夏・場・所・土」 当番 高橋昭三
唇にじゅんさい触れて夏料理 昭 三
よしきりの狂ひ鳴きして舟着場 酔 雨
空濠の経たる歳月御所ざくら 健 一
たかんなの土つけしまま届けらる 馬 洗
夏木立叙勲の沙汰は知りもせず 曽 死
聞香の風の道なる夏暖簾 馬 洗
土より立ち土を忘れて陽炎は 曽 死
六月 席題「才・能・発・見」 当番 吉波曽死
あじさゐの隠せし色の才いづこ 酔 雨
白南風や子役こゑ澄む能舞台 健 一
邂逅のホテル発して夏櫻 昭 三
大簗の水勢しろし月見草 健 一
才能は才には非ずビール飲む 曽 死
汗を見て肌を見て美しきかな 曽 死
才色の渦に溺れて櫻桃忌 馬 洗
七月 席題「空・中・爆・発」 当番 吉村馬洗
天邪鬼白南風の空を睨みをり 馬 洗
中程へつめて市電や梅雨しぐれ 昭 三
原爆忌近し灯籠作りつぐ 昭 三
金雀枝の黄が発端の旅愁かな 健 一
被爆樹と言えど緑陰ありにけり 曽 死
発心といふ結界に滝三筋 馬 洗
爆心地蟻漆黒で押し通す 曽 死
八月 席題「支・援・表・明」 当番 織野健一
太田川支流もここら翡翠とぶ 昭 三
月稚し救援投手めつた打ち 健 一
日の表風のおもての芙蓉かな 健 一
遠き青田の明らかに風の襞 曽 死
終戦忌どこまで支援すればよい 昭 三
表情のさゆらぎもせず生身魂 馬 洗
天支ふ十二單の大花野 馬 洗