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50年後のことを考えて責任を持ちたい ----2000年2月        月刊「観自在」巻頭の言葉より  住職/高田寛恵  将来を考えて今日のことをしなければならない。  10年や20年は一瞬の夢に近い。30年もまた一睡の如く過ぎ 去って行く。  50年後のことを考えるには50年前を考えるとよい。  50年前には冷暖房も無く、新幹線も無く、内視鏡手術も行われ ず、抗生物質も普及して無かった。  パソコンは芽も出ておらず、計算尺なるものが使用され、携帯電 話どころかダイヤル式の電話機も一般の家庭には無かった。  自動車は未だ貴重品で、占領軍の払下げのジープが有っても走れ る道路が少なく、道幅も狭く、交通機関も少なかった。  開発途上国の日本に現在の繁栄を予想出来た人は皆無であった。  私は50年前は幼児で、どのような社会であったか、聞いた以外 はほとんど知らない。  子供のころにはテレビは無く、週刊誌も無く、今ある物の大半は 私の成長と共に世間に出て来た。  いろいろと回顧すれば感慨無量なるものがある。多くの物が溢れ るようになったが、私たちは多くの貴重なものも失った。  もっとも大きな変化は人間関係と道徳観で、核家族とか、少子高 齢化など思いもよらなかった。  この50年間の日本の歩みは、どうも目先を上手く乗り切ること に重点が置かれていたように思え てならない。  過剰生産、過剰消費、過剰設備に過剰負債、昨今のリストラは凄 まじいものがあり、赤字国債も史上最大となっているが、もう、こ こらで10年後、30年後、50年後の将来を考えるべきだと思う のだが、如何だろうか。  将来のことを慎重に考えて日々を過ごしたい。 50年後を考えて 50年経つと私は102歳になる。惰性でこのまま行っても良さ そうな気がしないでもないが、私自身は別として、その頃に日本 で生活している人たちの幸せを考えると少々不安になる。老後は 幸せな子供や孫たちに囲まれて過ごしたいと切に願う。
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Kannon-in

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