月刊 観自在 目次


 虹 ミニミニ観自在      ----2000年9月                        観自在 編集部 モラル・ハザード ■MORAL HAZARD「道徳とか倫理のの欠如」という意味で使われてい ます。難しく考えないで、約束を守る、誠実である、相手の立場で 考えることが出来る。法律を守ることも含まれます。食品会社の回 収品の混入などや、金融機関の破綻処理、大企業の破綻などの方法 についてモラル・ハザードが指摘されているのはご存知の通りです。 ▼法律は国によって異なり、時代によっても異なります。道徳・倫 理も時代によって変化しているように思います。 ▼相手を傷つけることは、倫理・道徳に反します。戦争をすること は当然に認められません。平和を守るための軍隊の存在はどのよう に考えられますか。経済が国を超えて利益を追求し、通貨が暴落し たりするようなこともある現在の仕組みはどう思われますか。 ▼倫理的責任はあるかもしれないが、法律的責任はないと言われる ことがありますが、法律は日常遵守すべき最低基準を定めたもの、 倫理は人が如何に生きて行くか人間と人間との関係の有り方、規範、 原理、規則全体を指します。当然高い倫理観を持っている人と、法 律に触れさえしなければ何でもする人など色々に分けられます。 ▼佛教の十善戒の不殺生を人を殺してはいけないと単純解釈すれば 故意であろうと過失であろうと法律で裁かれます。相手の立場で考 える、いたわり、慈しみ、思いやりをもつことと解釈すれば極めて 高い倫理となります。ものを粗末に扱うことも、浪費することも、 生かして使わないことも、他人を苛めることも、安心して働く場所 を与えないことも、安心して住める場所を与えないことも、老後を 安心して過ごせないことも全て不殺生に反することになります。 ■お盆は正しくは盂蘭盆と言います。中国で作られた偽経と推察さ れていますが、内容は釈迦の十大弟子で過去・現世・来世の三世を 見通す力を有する目連尊者が亡くなった母親は如何と見ると、地獄 に陥ちて逆さまに吊るされて苦しんでいる。何とか救いたいと思い 釈迦に聞くと「安居(あんご)」の最後の日の僧自恣の日に多くの 僧侶に供養をすれば良いと教えられ、そのようにすると母親が救わ れたという故事に倣った習慣です。   ▼安居とは印度の雨季に僧侶が外出せずに部屋にこもって修行をす ることで、観音院でも六月には夏安居(げあんご)、十一月には冬 安居(とうあんご)と定めていて、つい先ごろまでは奇特な篤信徒 が施主になられて、レストランでご馳走されたりしていました。 「僧供養」という言葉は聞かなくなりましたが、皆さんはどのよう に思われますか。  お盆の棚経に行きますと、高校野球をテレビで見ながらお坊さん に読経させて、これで先祖のご供養になるでしょうか、疑問です。  初盆などは遠方の親族が飛行機で集まっていたりして盆行の時間 は正確であることが求められ、渋滞に巻き込まれたりすると寺に催 促の電話がジャンジャンとかかって来て奥さんが泣いたりする。  僧侶は一日三十軒から五十軒を回らなくてはならない。お盆がお 坊さんの稼ぎ時なんて、嘘です。本来の僧供養とは如何でしょう。 お彼岸を迎えるにあたり考える ■お彼岸は昼と夜の時間が同じになるころで、秋彼岸は9月の20 日が彼岸の入り、23日土曜日が彼岸の中日、26日が彼岸の明け と言います。この日太陽が真東から上がり真西に沈みます。 ▼彼岸の佛事は古く平安時代には行われていたと伝えられています。  阿弥陀佛の居所である浄土は西方十万億土を経た所にあり、全く 苦患のない安楽な世界で、阿弥陀佛が常に説法している。  十万億土とは娑婆世界から阿弥陀如来の極楽浄土に至る間にある 佛国土の数のことで、極楽浄土が遠いことをいう。 ▼この頃、太陽に沈む真西に阿弥陀如来のおられる浄土を念じて極 楽往生を願ったものでしょう。 ▼彼岸とは文字通り、彼(か)の岸で、迷いに満ちたこの岸から悟 りの彼の岸を願う日でもあります。  彼岸に渡る方策として「お念佛」を唱えることや「十善戒」を護 持するなど、いろいろあります。  彼の岸を来世と思っている人もあるし、現世で行き着きたいと考 えている人もあります。  此の岸を出家前の釈迦と思い、彼岸を涅槃寂静の悟りの境地に入 られた釈迦牟尼世尊の状態と思う人もあります。 ■法主さんは十善戒と八正道で彼岸に渡れると言われました。八正 道とは。正見・正思惟・正語・正業・正命・正精進・正念・正定、 すなわち正しい見解・決意・言葉・行為・生活・努力・思念・瞑想 のことです。八正道は悟りに至る方便の船です。船を傾けないよう に乗り続けていることが大切だとも言われます。焦ると船から落ち てしまったり、もう駄目だと下船してしまわないようにすることが 大切だそうです。 ▼方便とは人を教え導く手段で真理に誘い入れるために仮に設けた 例え話で「船」と言いました。 ▼嘘も方便とは目的のために利用する便宜の手段で、時に嘘を使わ ねばならないこともあると言うことですが「嘘」はいけません。彼 の岸とか此の岸、渡る船に例えたのは全部方便です。 ■八月十一日、日銀の零金利政策が政府の強い反対にも関わらず解 除されました。政府も日銀も国民のことを考えての結論ですが、立 場が違えば方法も異なります。まるで宗旨宗派のようなものだろう かと思いました。日銀の独立性を示す格好の事例です。      ▼先祖を大切にする家は栄えると言う佛壇屋のコマーシャルがあり ますが本当のことです。  先祖を大切にすることは祖父母や両親を大切にすることで、墓参 や読経、説教などを通じて聖職者と親しくなります。これらの行為 は孝行と世間から受け取られます。  最近では親に孝行するとか、両親を大切にする考え方は無くなり つつあります。それらの中で親を尊敬し感謝し、大切に思うことは 極めて麗しい日常であり、周囲の人に感心される結果になります。  この世に理想的な親はいませんし、期待される人間像をもつ子供 もいません。これらの中で、親に心配を掛けたり、親を悲しませた り、親の悪口を言うことは見苦しいばかりでなく、損なことを日常 的にする智恵の無い人であると評価される5 COナす。

月刊 観自在 目次2000-082000-10


e-mail:kanjizaik@kannon-in.or.jp