観自在目次  ホームページ内検索
Web版 月刊 観自在  いたわり 慈しみ 思いやり 相手の立場で考える
佛具・お供物のお話  明敬 記 
平成12年・2000年10月号

燈明・燈籠 

■お燈明のみ光■

 み佛さまにお供えする明かりを燈明(とうみょう)と言います。

 燈明は六波羅蜜の「智慧(ちえ)」をあらわしています。佛教でいう

智慧は、普段私たちが使う知恵とは区別され、サンスクリットのprajna

「理智(りち)」の訳として用いられています。これは、心の迷い、煩

悩(ぼんのう)を滅し、物事の真理を明らかにして悟(さと)りを開く

こと、正しいこと間違ったことの判断、正邪(せいじゃ)を区別する力

を持つことをいいます。

 中でも、この世に存在するすべてのものの本質は皆「空(くう)」で

あることを認識とします。空とは、すべてのものは因縁により現在ある

のだからそこには実体と言うべきものは何も無い、存在を絶対視したり

執着(しゅうじゃく)してはならないという思想です。

 prajnaの俗語形パンニャーpannaは「般若(はんにゃ)」と漢訳され

「空」の心を説いた教典「般若経」の名はここに由来しています。

 また、お燈明は普通左右一対でお供えします。これは「自燈」「法燈」

と呼ばれ、お釈迦さまがクシナガラの郊外にある沙羅双樹(さらそうじゅ)

の木の下で説かれた最後の説法の中の一つである「自らを燈火(ともしび)

とし、よりどころにせよ。法を燈火とし、よりどころにせよ。」という

教えを形としてあらわしたものです。

■日々のご供養■

 お燈明とお線香は礼拝の直前に火を着けます。そして、行法(ぎょう

ぼう)が終わったら席を立つ前に火を消します。お燈明やお線香は息を

吹き掛けて消してはなりません。ロウソク消しを用いましょう。手のひ

らで扇いで消してもかまいませんが、いずれにしても、ロウソクを倒さ

ぬように気を付け確実に火を消すことが大切です。

 また、途中で席を外す時も必ず火を消してください。不意の用事や電

話、来客中にロウソクや線香が倒れたり引火したりで、それが原因で火

事になったという話が今だに聞かれるのは残念なことです。火の元には

呉々もご注意ください。

 お燈明を長時間ともしたいときや、常夜燈としたいときには電球を用

いたものが安全で便利です。

■ロウソクのはじまり■

 ロウソクは初め、たいまつ状の物であったのが次第に現在の形になっ

ていったと言われています。

 エジプト・ギリシア・ローマなどでは早くから、蜜蜂の巣から作る蜜

臘(みつろう)が用いられていました。ロウソクとしては紀元前3世紀

ごろには登場しており、中国でも同時代の使用がみとめられます。

 日本には、佛教の伝来に伴ってもたらされました。奈良時代にはすで

にロウソクが使用されていたとの史料も残っています。しかし、当時は

中国より輸入された蜜ロウソクで大変な貴重品であったため、宮廷や一

部の寺院でしか用いられていませんでした。

 和ロウソクの原型は室町時代後期(16世紀)に製造が始まり、江戸時

代に入ると生産も増え、末期には都市を中心に広く普及していきました。

しかし、一般家庭にまで行き渡ったのは、明治になって洋ロウソクの製

造が行われ、安価に手に入るようになってからのことです。

 和ロウソクは、漆(うるし)やハゼノキなどのウルシ科の樹木の実を

ついて、蒸してから絞り取った固形脂肪を原料にして、芯(燭心)に手

で何度も塗り重ねて作られます。芯は燃え残るので、芯切り鋏(はさみ)

で切って炎を調整します。

 洋ロウソクは、ピッチや獣脂などを原料としていましたが、現在では

パラフィンが用いられています。芯を通した型に、溶かしたパラフィン

を流し固めて作ります。

■燈供養具(とうくようぐ)■

 燈火は初め、燈明皿に油を入れて藺草(いぐさ)の芯で出来た燈心を

浸してともしましたが、やがてロウソクとなり、現代では電球にと移り

変わってきました。

 油をともす台を燈台(とうだい)、ロウソクをともす台は燭台(しょ

くだい)と呼び、風などで火が消えないように上部に覆いをしたものを

雪洞(ぼんぼり)燈台といいます。菊の花の形の台を持つものを菊燈、

蓮は蓮燈といい、大きな輪を持った吊り下げ形の輪燈もあります。

 燈籠(とうろう)の一般的な形式は、宝珠(ほうじゅ)をのせた笠、

火袋、受台、脚、地輪(台)からなり、台の上に立つものは台燈籠(置

燈籠)と呼ばれます。釣環のついた宝珠鈕(ちゅう)が笠の上についた

釣燈籠には地輪は無く、釣環で連ねて釣るすことが出来ます。燈籠には

寛通型、丸型、菱型、六角型、隠元型、曼荼羅燈など様々な形があります。

■般若心経ロウソクの功徳■

 般若心経はわずか二百六十余文字の中に佛教の叡知(えいち)が集約

されています。この有り難いお経がロウソクの周りに刻まれているのが、

般若心経ロウソクです。このロウソクに燈(ひ)をともせば、三日三晩

不断の般若心経を唱え続けたのと同じ功徳(くどく)があるといわれて

います。

 本尊守護、願望成就、試験合格などみ佛のご守護を願い燈をともされ

れば、その光明は希望の光となり真実の道が開けゆきます。

 先祖供養やご命日など、ご供養を祈って燈をともされれば、その光明

により亡き方を迷うことなく極楽浄土にお導き下さいます。

■観音院の燈籠供養■

 毎年十月は、観音院においては燈籠供養「萬燈会(まんどうえ)」が

執行されます。導師に続いて散華(さんげ)が盛られた華籠(けこ)を

捧げ持った僧侶たちは、光明真言を唱えつつ粛々(しゅくしゅく)と進

みます。本堂には散華が舞い、その光景はみ佛さまの世界の一端に触れ

たかのような趣があります。

 頂かれた散華は特別のお願い事のある時に、願意とお名前を書かれて

ご祈願をお願いされて下さい。

 観音院が続く限りともし続けられるお燈籠は、献燈の感謝と真心に量

り知れない功徳を生みます。燈籠のみ光は永代(えいたい)に輝き続け、

佛縁を深めゆき、み佛の厚きご加護をいただきます。

■心の道標として■

 み佛さまに捧げるその燈火は願う人の光明となり、進むべき道を照ら

し、心の道標(みちしるべ)として、闇に迷うことなきよう正しき道を

お導きくださいます。

 お燈明に燈をともすように、常に私たちの心の中にも燈(あかり)を

ともし、迷いから逃れ、物事を正しく見て、正しく考え、正しく行動で

きるようみ佛さまのご守護を祈りつつ、まことの道を日々に歩んでまい

りましょう。

 


[観自在目次] [観音院ホームページ内検索] [観音院] [総合目次] [門前町] [寺子屋] [バーチャル霊園]

ご意見・ご感想は、info@kannon-in.or.jp まで。お待ちしております。

COPYRIGHT 1996-2001 観自在社 KANJIZAI-SHA