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Web版 月刊 観自在  いたわり 慈しみ 思いやり 相手の立場で考える
佛具・お供物のお話  明敬 記 
平成12年・2000年8月号

供花・供華・佛花 

■花のお供え■

 み佛さまへお供えする花のことを供花(くげ・供華)と言います。

供花は、美しい花で佛前を荘厳すると伴に、その芳香をお供えし

す。良い香りは、み佛さまの最も喜ばれるご供養の一つなのです。

 花は、六波羅密(ろくはらみつ)の「忍辱(にんにく)」を示し

ています。侮辱を耐え忍んだ経験により培(つちか)われた、強靱

(きょうじん)な精神を持つことを意味し、あらゆることに応える

ことの出来る広い心をあらわしています。

■色鮮やかに、香り豊かに■

 ご佛前には、どんなお花をお供えすれば良いのでしょうか。

 それは、み佛さまに喜んで頂ける花です。難しく考える必要はあ

りません。ご自身が頂かれたときにどんな花だったら嬉しいかを思

い浮かべてみて下さい。心を込めて選ばれた花に、み佛さまもきっ

とお喜びになることでしょう。

 故人のお好きだったお花を選ばれるのも良いことです。生前に、

丹精込めて育てられ、美しく咲いた花をお供えされれば、さらに良

いご供養となるでしょう。

 花はお店で求められたものに限らず、ご家庭のお庭に咲いている

花も四季折々に色鮮やかで、美しいものがあります。野や河原で摘

まれた花も、素朴で可憐(かれん)な愛らしさがあり素敵ですね。

 お花選びに迷われたときには、お花屋さんで「ご佛前にお供えす

るお花」と言ってお願いされると、お店の方で色々と組み合わせて

選んで下さいます。美しい彩りの花束や、盛り花、フラワーアレン

ジメントも多くお供えされています。

 昔から、毒のある花や刺のある花、香りの悪い花などは避けた方

が良いと言われてきました。しかし、最近ではバラの花もよくお供

えされています。バラの花は、見た目にも色鮮やかで美しく、香り

も豊かで好まれる人も多くおられ、普段にお供えされるようになり

ました。また、胡蝶蘭などの鉢植えをお供えされる方もおられます。

■お供えの仕方■

 花をお供えする為の佛具として、花瓶(けびょう・華瓶)があり

ます。花瓶は、左右に一対でお供えします。大きな花びんは、佛壇

の手前に置いてお供えします。

 佛壇の中段には、金蓮華(きんれんか)と呼ばれる常花(じょう

か・造花)をお供えします。また、シキミなどの青木のものをお供

えすることもあります。色のあるお花は下段にお供えします。

花は佛さまにお供えするものではありますが、佛さまの方には向

けません。花の表側を礼拝(らいはい)する側、手前を向けてお供

えします。それは、花によって荘厳(そうごん)された佛さまの世

界を、私たちが味わうという意味があるからなのです。

 ご佛前にお供えされた、色とりどりのお花を眺めていると、不思

議と心が安らいできます。それはみ佛さまの慈悲の心に触れ、身も

心も清められていくからなのです。

■樒(しきみ・しきび)■

 シキミは「香の木(こうのき)」「はなの木」とも呼ばれ、ご佛

前やお墓にお供えする青木として良く用いられています。

 シキミは、高さ2〜10mの常緑小高木で、その葉や枝を切ると清

々しい良い香りがします。木の皮や葉は乾燥して粉末にし、お線香

や焼香になります。木の材は、念珠や寄木などに使われています。

 花は3月〜4月にかけて咲きます。直径3cm程の淡い黄色の花は、

葉のつけ根部分に付きます。秋になると実が熟してはじけ、中から

種子が勢いよく飛び出します。

 シキミという名前は、この実に毒があるために「悪(あ)しき実」

と呼ばれ、それが縮まって「しきみ」となったと言われています。

■高野槇(こうやまき)■

 槇は、本来は杉の古名で「優れた木」という意味があります。

 観音院でお供えしている槇は、高野槇と呼ばれるもので、和歌山

県の高野山のみに生育しており、世界中で一属一種しかないという

とても珍しい樹木です。

 普通の槇はマキ科の常緑高木ですが、高野槇はスギ科とされてい

ます。槇は水や湿気に強く、長期にわたって変色しにくい上に、腐

りにくいという特性があります。マキハダと呼ばれる木の皮は、水

漏れ防止用の詰め物になります。

■常花(じょうか)■

 常花とは、蓮(はす)の葉や花を模(も)した造花のことで、金

色のものは金蓮華といいます。

 観音院の内持佛(ないじぶつ)の大壇(だいだん)には、白・青・

黄・赤・黒の五色(ごしき)の蓮の花の五瓶花(ごびょうか)がお

供えされています。中央および四隅に配置されていますが、その配

色は作法により定められています。

 蓮の花は、泥中より茎を伸ばし水面で聖なる花を咲かせます。そ

れゆえに、迷いの多き現世(げんせ)にありながらも清くありたい

と思い、美しき人生を歩みたいと願って蓮華をお供えするのです。

■心を込めて■

 折角お供えされたお花も、忘れてしまって枯れていては、お供え

した意味がありません。毎日、水をとり替えて、枯れた花や葉の無

いように気を付けましょう。

 造花のお花をお供えされている場合も、出来るだけ生花を一緒に

お供えするようにしましょう。

 ご佛前の花は、佛さまに喜んで頂けるように、いつも生き生きと

した新鮮な花をお供えするように心を配りましょう。

 


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