Web版 月刊 観自在 [月刊「観自在」総目次]
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佛具・お供物のお話
平成14年・2002年3月号 [佛具・お供物のお話
平成14年2月号] [佛具・お供物のお話 平成14年4月号]
−いたわり 慈しみ 思いやり 相手の立場で考える−
−春のお彼岸・落雁− ■幼き日よりみ佛さまと触れ合いを■ 子供の頃、春・夏・冬休みの他に色々なお休みの度に、母 の実家に行きました。そして、必ずといっていいほどお佛壇 (ぶつだん)のお掃除が行事のようにありました。 今風の小さなものではなく、まずは広い仏間があり、部屋 の奥の襖(ふすま)を開けると二重に観音開きになった大人 の背ほどもある大きな佛壇でした。 いつ教えられたのかは覚えていませんが、仏間では大きな 足音たてたり、大きな声で話すことは禁止というより躊躇 (ためら)われました。といってもそれは怖れではなく、そ こは聖なる場所であって、み佛さまに礼儀正しくということ であったと思います。 ところで、お佛壇のお掃除には子供たちにも参加してもら いましょう。小さな子供さんはお供物のお菓子を自分の手で お供えしたり、高学年になったら大人が手を添えながらお飾 りのホコリを払ったりと、年齢に応じて何か出来ることがあ ると思います。 難しい部分は大人が、簡単な部分は子供さんにしてもらっ て、み佛さまとの触れ合いの時間を作ってあげましょう。 そして、そのうちに佛壇のお掃除の方法は勿論、どの様に ご供養すれば良いかが自然に伝わっていくと思います。 佛壇のお掃除は特別行事ではなく日常の当たり前の事とし て普段自分達の部屋を掃除するのと同じように、ご先祖さま やみ佛さまに綺麗なお部屋(佛壇)に住んで貰いたいという 気持ちを持ってもらえたらと思います。 ■お供え物■ み佛さまにお供えするお花も庭やお花屋さんで子供たちに 選んでもらうと良いと思います。 きっと、どの花が綺麗か、香りは良いかと、み佛さまが喜 んで下さるようにと一生懸命考えてくれるでしょう。 掃除の後は、お供物のお下がりを頂くのですが、祖母は 「佛さまのお下がりを食べると体の丈夫な賢(かしこい)優 しい子になれるんだよ。」と言って手の上に乗せてくれまし た。 その時に頂くお菓子は普段と違う崇高(すうこう)な味が したような気がします。普段おやつに食べている物でも、一 度み佛さまにお供えした物はとても有り難い、特別な物に思 えました。 ■落雁(らくがん)のお供え■ お供物は特別な物でなくとも、私達が日常に頂いている物 を一番最初に良いところをお供えすることが大切ですが、お 供物を絶えないようにするために、干菓子(ひがし・落雁) のお供えをされる方が多いようです。お供物が常にお供えさ れているのは大変に良い心掛けだと思いますが、よく年代物 の落雁を見ることがあります。 落雁にも賞味期限があります。上等な和三盆(わさんぼん) の落雁から落雁型のビニール入り砂糖まで色々とありますが、 つい自分たちが口にしないからと期限の切れた物を何時まで も置いておく悪い習慣がついてしまっているようで残念に思 います。 ■落雁・和三盆■ 落雁はみじん粉(もち米を蒸し、乾燥し、粉にしたもの) や麦焦がし、きな粉などに砂糖や色粉を入れて型で抜いたも のです。中でも和三盆という上質のお砂糖を使用したものが 上等とされています。 和三盆は砂糖を練(ね)りに練り上げ、精製に精製を重ね た純粋に近い砂糖で、高級菓子に良く使われています。 和三盆は輸入品より優れた砂糖をと、十八世紀ごろ琉球か らサトウキビを取り寄せて試行錯誤し出来たものというお話 です。 和三盆というのは中国の唐三盆に対して日本で作られたと いう意味から呼ばれているようです。 その製造法は和三盆の産地として有名な四国は讃岐にお住 まいの信徒さんに教えて頂いたところ、 一、サトウキビを圧搾し汁を絞り石灰を加えます。 二、沈殿物を除いて煮詰めます。 三、これに水を加えて捏(こ)ね、木綿の袋に入れて加圧し 分蜜します。 四、少量の水(寒の水)を加えては、すり合わせ練り上げる。 この工程を5回繰り返します。 荒がけ→荒研ぎ→どぶ研ぎ→中研ぎ→あげ研ぎ と、練りを研ぐというのは丁度陶芸の粘土を練る感じでしょ うか。そして、この過程で漂白され、自然乾燥しやっと白い 上質のお砂糖「和三盆」が生まれます。 ちなみに三盆というのは、蜜を取り分ける作業をお盆の上 で三度したからだそうです。 普通のお砂糖でも勿論結構ですが、和三盆を用いた物だと お下がりも美味しく頂けます。 お下がりが美味しく頂けるということは、逆に言えば良い ものを吟味して心を込めてお供えし、また新鮮であるとも言 えるでしょう。 袋詰めのお砂糖の場合も時々には新しい物に変えて、お下 がりは普段のお料理に使って頂いた方が佛さまも喜ばれると 思います。 日常の中で「一番にみ佛さまにお供えし、そして、そのお 下がりを有り難く頂く」。春のお彼岸を良き機会とし、この 良き習慣を幼い心にも、自然に伝えていきたいと思います。
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