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佛具・お供物のお話  平成13年・2001年9月号   [佛具・お供物のお話 8月号] [10月号]

 −いたわり 慈しみ 思いやり 相手の立場で考える


み仏さまの荘厳や給仕の仕方は進化が止まったまま
  現在の様式は千年くらい昔の様式を切り取ったもの 
−給仕(きゅうじ)の仕方− 観音院の護摩壇(ごまだん)の工夫 ■観音院の護摩壇は、様式は千年くらい昔のものと見掛けは同じで すが、実は大変に工夫が凝縮されているのです。  従来の護摩壇の壇面は、板をたるきで支え、表面には漆で仕上げ てあります。中央には護摩の炉に相当する釜が設置してあります。 周囲は五色の壇線で囲んであります。 ▼観音院では一日三回、護摩を焚(た)きます。普通の護摩壇では 表面は焦げて、炉の下には水の入れ物を置いて熱を防いでいたので すが、この程度では到底余熱を防ぐことは不可能でした。 ▼そこで厚さ1センチのステンレスに変更しました。すると護摩の 修法の途中でステンレスが膨張して、中央部が3センチくらい盛り 上がります。 今度は鋳物で厚さ五センチくらいのものに変更してみました。とこ ろが重さが三百キロぐらいあって重すぎて困ります。 ▼そこで壇面を「九つの銅板」に分けて、支えを垂木から鉄に変更 し、間にガラス繊維を置きました。周囲に二メートルくらいの空気 のカーテンを吹き上げ、天蓋(てんがい)で吸い取るように設計し、 本堂の地下室に空気取り入れダクトと五馬力のモーターをつけまし た。さらに、高さ十メートルの煙突をつけ、集塵装置と空気吸い上 げの五馬力のモーターを設置して、問題は一切解決しました。 湯のみ茶碗と皿 ■仏具に使用されている材料は大部分が真鍮製で金メッキしたもの ですが。お仏飯(ぶっぱん)は本漆(うるし)朱塗りの器で、大きさ は簡略な小型ではなく日常使用されるものと全く同じです。  調理も丁寧に味付けしたもので、大切なお客さまにお出しするよ うな真心のこもったものです。新鮮の物を朝一番に調理いたします。 ■お供えするお茶は、煎茶、玉露など、変わったところではロイヤ ルコペンハーゲンやマイセンなどの器で紅茶やウーロン茶、ココア や珈琲をお供えします。 ▼難しく考えていません。何処かのお宅へ行かれた際に「メロンを どうぞ」と丸いまま出されたら、漫画になります。私たちが果物を お供えする時には直ぐ食べられる状態で、冷やしたものにフォーク を添えて出します。  み仏さまは大切なお客さま以上にお仕(つか)えします。 畳敷きから椅子へ ■賛否両論ありますが、畳に正座から椅子式に少しづづ移行中です。 扇風機だけではなく冷暖房機に移行しました。  ですから寺といえば保守的と思われるかもしれませんがゆっくり と現代化しています。 ▼照明器具も平安・鎌倉時代の様式のものを使っていますが、中は 燈芯に燈油ではなくて、電球から蛍光灯電灯色に移行中です。その 内に光ファイバーなども多用されると考えています。 故人の好物、缶ビールなど ■仏壇やお墓に、生前にお酒が好きだった故人に缶ビールや缶チュ ーハイ、煙草等を供えてあるのを見掛けますが、珈琲豆をそのまま 珈琲カップに入れてはお客さんには出しませんね。  墓参のときは、嗜好品は封を開けて、飲める状態で供えて、礼拝 (らいはい)した後はおろしてお持ち帰りください。 ▼煙草に火を点けて線香立てで紫煙がたなびいているのも可です。 ▼観音院は焼香に伽羅(きゃら)を使用しています。これは純金よ り高価で入手が難しくなりつつあります。ベトナムへ旅行される方 に依頼して違反にならない程度の量を買ってもらっています。とて も硬い香木で細かく刻むのが大変な作業になります。 和風法衣(ほうえ)の近代化は無理 ■法主さんが金襴の法衣を拒否しておられるのは華美を離れてのこ とですが、大きな法要法会には金襴もまた有り難いものです。 ▼金襴の法衣を着崩れしないように着るのは大変です。一旦着用す ると小用も慎むべきです。世の中がこれだけ便利になりましたのに 金襴の法衣だけは改良されません。 ▼それに金襴緞子自体が伝統工芸品で職人さんも減り、いろいろな 物が安くなる中で値下がりの傾向は見られないようです。 ■観音院には十二名分の金襴の法衣が什器(じゅうき)備品として 備えられていますが、手入れが大変です。大切に護持(ごじ)した いと願います。 ■み仏さまにお供え物をするには、私達がふだん大切なお客さまを  お迎えして接待するような気持ちが大切で、もてなしの心が大切  です。器(うつわ)は日常生活で大切にしている物が良いですね。 ■法主さんはどのような大きな法要で導師を勤められる場合でも、  空衣(うつお)と袈裟で日常のものを使われています。全部、  金襴のお坊さんの中でも良く調和して美しく見えるのです。 ■お経の多くは伝来した当時の読み方で今日に至っています。漢音  読み、呉音読みなどですが、多くの皆さまに教えを広めるために  は、現代語で各国語にするような試みが必要です。 ■教えについては、教わったままに無条件に受け入れるよりは、自  分なりによくよく考えて咀嚼(そしゃく)して、問われても内容を  良く説明で きるような準備や心得が、僧侶に必要だと考えます。

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