け し の 花 桜花 終わりて今日の けしの花 学舎の マッスのけしに 思い寄せ この頃になると、毎年 学舎を思い出す。 もう、五十年も前の事。 セーラー服の女学生を夢見て、受験に挑む。 学科テストも済み、あとは作文のみ。題は「さくら」、さて、 何を書こうか。 先ずは月並みな事。そこで手が止まってしまう。どうしよう。 困った。困った。でも困ってばかりもいられない。一か八か 思う侭に書くのみである。知っている限りの装飾語を連ねた。 そして時間ぎりぎりまで頑張った。 そうそう、こんな事もあった。 その頃、「口頭試問の問題集」と言うのがあって(姉達が使っ たもの)、学校で担任の先生に見せると、何問か使われた。その 中で「校長先生のお名前は」と言うのがあった。答「○○です」。 「XXです」と私、すると、先生は真っ赤な顔をして苦笑いさ れたのである。 ム、ム、、「XX先生」と言わなかったからかな。 でも私は正解通り答えた筈なのに、今もってよく分からない。 そのような問題は出なかったけれど・・・・・ 合格発表の朝。暢気な顔の私に 母の方がハラハラしていた。 近くの五人が土手の道を、小躍りしながら見に行った。 さすがに番号を探すときは緊張した。 一人だけ番号の無い者がいて、帰りは皆無口であった。 真新しい制服で見た、真紅の大輪のけしの花は、今もって忘れる 事のできない群像である。 数年前も尋ねてみたが、一本のけしも目にする事が出来なかった。 ************